<コンピュータサイエンス> LINUXの活用1 LINUXへの招待 |
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千葉労災病院 放射線部 多田 浩章 |
1.はじめに Linux(リナックスまたはリヌクスと読まれることが多い)はUNIX互換のフリーなOSです。 近年では、IBM・NEC・富士通などの大手ベンダーがLinuxを正式に採用しており、公共機関でも導入され始めています。 私が最初に自分のパソコンにLinuxをインストールしたのはもう8年も前になりますが、当時を振り返ると、 インストーラは今とは違いテキストベースの素っ気ないもので、ハードウエア環境によってはインストールが完了しない事もままあり、 インストール自体が大変な作業でした。しかし現在のインストーラはグラフィカルで、高機能なおかつ親切なものに変化してきており、 Linuxを楽にインストールして簡単に使いはじめることができます。 また、Linuxに触り始めたばかりの頃の私は、デスクトップ用途のアプリケーションもまだ充実していなかったこともあり、 インストールはしたものの利用価値を見出すことができずにいましたが、近年ではDICOMサーバーWWW連携システムを自作したり、 つい最近、画像処理プログラミングの勉強もLinux環境で始めまたところです。 MISG会員である皆様にとっても、Linuxの世界に足を踏み入れることは医療情報システムやCADの研究等に役立つでしょうから、 ぜひ多くの方にLinuxに興味を持ってもらいたいと思います。 |
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2.Linuxで何が出来るか (表1)にLinux上で出来ることの例をあげました。もちろん、表に上げた全てのことは商用のアプリケーションを使わずに出来ます。
プログラミング エディタからコンパイラ、あるいは総合開発環境まで各種用意されています。 GUIを伴わないアプリケーションをC/C++で開発するなら、お好きなエディタと、GCC(C/C++コンパイラ)ですぐにでも始められます。 DICOMサーバ構築 ワシントン大学マリンクロット放射線学研究所(MIR)の電子放射線学研究室(ERL)は、 DICOMの普及と接続試験を目的としてCentral Test Node (CTN)というソフトウエア群を開発・公開しています。 この中にDICOMサーバアプリケーションも含まれており、Linux上で動作させることが出来ます。 レセコン構築 日本医師会のORCAプロジェクトが開発・公開を行っている「日医標準レセプトソフト」を使って、 Linuxマシンを医事コンピュータに仕立てることが出来ます。 なお、ORCAプロジェクト(http://www.orca.med.or.jp/)とは、医療情報ネットワーク推進委員会にて 「医師会総合情報ネットワーク構想」(1997年 情報化検討委員会)を構成するツールの一つとして認められた、 日本医師会の研究事業プロジェクトです。 インターネット利用 NetscapeやMozillaは、Linux/Windows/Macそれぞれの対応版があるので、これを使っていれば異なるOS環境でも同様の使い勝手で WEBブラウジングやメールなどのインターネットの利用が出来ます。(図1)
画像処理 Mac/Windowsで画像処理やフォトレタッチをする際にPhotoshopが良く使われていますが、 Linux上ではGIMPという定番ソフトウェアでPhotoshop同等の処理を行うことが出来ます。 実際に本稿で用いているLinux上の画像キャプチャ・フィルタ処理・サイズ変更には全てGIMPを用いています。 文章作成 現在パソコン上で使われているワープロ/表計算/プレゼンテーションといったオフィスソフトは、 「Microsoft Office」がデファクトスタンダードになっており、以前は「Microsoft Office」で作られたファイルが扱えなかったことが、 Linuxが個人ユーザに敬遠されてきた大きな要因でありました。しかし最近では、「StarOffice」、「Hancom Linux office」、 「ThinkFree Office」、「Just Arks」といった「Microsoft Office」と互換性を高めた商用のアプリケーションが登場しており、 更に「StarOffice」のオープンソース版の「OpenOffice」も配布されています。まだ若干の日本語入力上の不具合はありますが、 文書作成でも十分に実用の域に達してきています。事実、本稿の下書きは、Linux上の「Open office」とWindows2000上の「Microsoft Word」 の両ソフトウエアで加筆しながら書き上げました。(図2、3)
ファイル共有 Windowsネットワーク用ファイルサーバである「Samba」、Macのネットワークプロトコルをサポートする「Netatalk」、 UNIX標準のネットワークファイル共有の仕組みであるNFS(Network File System)を使えば、 ネットワーク上にLinux、(他の)UNIX、Windows、Macが混在した環境でもネットワークを介したファイルのやり取りが可能になります。 |
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3.何故出来るか では、何故Linux上でこんなに豊富で便利なソフトウエアが自由に(無料で)使うことができるのかについて少し述べたいと思います。 UNIX環境 UNIXは1969年に米国AT&Tのベル研究所で開発されたOSに端を発し、1975年にソースが公開された後は世界中の大学や研究所で利用・改良され 発展してきました。現在では、その発展の経過によりUNIXにはいくつかの系統が存在してますが、 今日のコンピュータサイエンスの土台をUNIXが担ってきたといっても過言ではないでしょう。 また、研究の成果である多くのソフトウエアがUNIXで使用されることを前提としているもの至極当然でしょう。 そして、LinuxはUNIX互換のOSであるので、UNIX環境で開発されたソフトウエア資源を容易に利用することができるのです。 オープンソース UNIXの世界では、プログラムのソースコードを共有してコードの再利用をするということが日常的に行われてきました。 そしてこのような土壌からオープンソースという概念が生まれました。 これは、開発したソフトウエアのソースコードを公開すれば、ユーザーも自由に開発に加わることができ、 このことがソフトウエアの品質を高めることにつながるという考え方の上に成り立っています。 OS自体がオープンソースであるLinuxですから、品質の高いソフトウエアを無償で利用できるというオープンソースの恩恵を 最大限に享受することが可能なのです。 |
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4.Linuxを使うためには それでは最後に、Linuxを使うために必要な情報を挙げます。 ディストリビューション Linuxは、OS自体のLinuxと、Linux上で使う基本アプリケーションや各種ツールをまとめたディストリビューション(配布物と言う意味)という形で 手に入れることが普通です。そして、ディストリビュータ(配布元)毎に、インストーラやデフォルトでインストールされるアプリケーション、 さらにアプリケーション管理の方法や設定上の味付等が異なっています。良く言えば自分の好みに合ったものを選択できるのですが、 半面初心者を混乱させる元にもなっています。 多くのディストリビューションではアプリケーションを、当該アプリケーションのバイナリデータ(実行可能な状態)と実行する際に必要になる 他のアプリケーションのバイナリデータ、およびインストールや使用時に必要な情報(設定ファイル等)をまとめたパッケージと言う形で取り扱います。 アプリケーションをインストールする際には、使用しようとしているLinux上でコンパイルしてインストールすることもできますが、 RPM(Redhat系のデフォルト)やapt(Debian系のデフォルト)といったパッケージ管理ツールを使って行うほうが簡単ですし一般的です。 (表2)に主なディストリビューションの一覧を示します。
公式サイト一覧
入手するには、商用アプリケーションやマニュアル、サポート権が付属する製品版を買うか、 雑誌や書籍の付録CDやデストリビュータのサイト、またはFTPサイトからのダウンロードですが、 商用アプリケーションがなくても不自由はしないし、Redhatなどは詳細なドキュメントがRedhatのサイトで公開されているので、 まずは雑誌の付録CDあるいはダウンロードで入手することをお薦めします。 ディストリビューション選択の際には、最もユーザが多いのはおそらくRedhat系(Redhat、VINE、Turbolinux等)であり、 日医標準レセプトソフトORCAはDebian用パッケージの形で提供されていると言う点を考慮に入れておけばよいかと思います。 インストール インストール方法に関しては、マシンのシステム構成、選択したディストリビューションにより千差万別であるし、 雑誌や書籍でも紹介されているのでここでは割愛致しますが、参考までにRedhatの動作要件を(表3)に提示しておきます。 最近のディストリビューションはイントーラーがよくできているので、インストールに関してはさほど問題無く行えるかもしれませんが、 不注意でそれまでの環境を破壊する事(Windows領域を上書きしてしまう等)も考えられますので、Linuxのインストールは自己責任で行って下さい。 (とは言っても、慣れれば全然恐くないです。)
情報源 最後にLinuxの情報源の一部を挙げておきます。(表4)
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